研究概要 |
血管病変の主座は病変によって異なることが知られており、高血圧は小さい血管壁の肥厚として現れ、動脈硬化においては大きな血管に病変が現れる。これらの事実は動脈血管樹の部位によって血管平滑筋の性質が異なることを示唆している。我々は血管樹の部位による血管平滑筋の性質に違いがあるかを明らかにすることを目的として実験を行った。 ラットを工一テル麻酔下に上腸管膜動脈にポリエチレンチューブを刺入し、周囲組織を剥離し、小腸に入るところで切除した。酸化鉄含有MEMを無菌的に注入し、動脈のみに鉄イオンを沈着させた。動脈末端から4-5mmのところで切除し、小さな血管とした。腸間膜動脈から1cmのところまでを大きな血管として切離した。ラット6頭分を集めて用いた。これらをチューブの中でコラーゲナーゼで消化し、チューブの外側から磁石で動脈平滑筋細胞を引き付けて平滑筋細胞を採取した。培養したところ、大きい血管はpolygonal及び類円形の形態を示すものが多く、小さい血管ではbipolar及び紡錘形の細胞が多かった。アクチン抗体およびデスミン抗体を用いて培養細胞が血管平滑筋細胞由来の細胞であることを同定した。続いて、培養脂肪の増殖能を検索した。大きい血管由来のものより小さい血管由来の細胞の方が増殖能は高かった。これらを変形可能なシャーレに培養し、シャーレを伸長したところ、小さい血管の細胞の方が伸長によって増殖能が高くなることが確認された(Microvascular Research 55+14-28,1998)。 我々はヒト上腸管動脈平滑筋細胞においてもこれらのことを明らかにし、中間径フィラメントに加えて、カルポニン、カルデスモン等の分化マーカー及びエンドセリンレセプター、アンギオテンシンレセプターを用いてヒト上腸管動脈血管樹の部位による性質の異なることを明らかにした(Microvascular Research in press)。
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