研究概要 |
糸球体上皮細胞の分化過程で細胞周期調節分子の発現をフト胎児腎観察した結果、糸球体上皮細胞が分化を遂げるのと平行してサイクリン依存性キナーゼ抑制分子であるp27、p57が特異的に発現していることを見いだした。この分子の発現は、細胞周期活性因子であるサイクリンやそのマーカーであるki-67の発現抑制とパラレルに動くことが示され、糸球体上皮細胞の分化には細胞周期の停止が重要であると結論し報告した(Am J Pathol,1998;153 1511-1520)。 さらに、この分子が糸球体の病変の進展にいかなる意義を持つのかについて組織発現を巣状糸球体硬化疾患者で検討した結果、糸球体内に増殖する上皮細胞にはサイトケラチンが亢進し、p27の発現が低下していることが分かった。すなわち、糸球体上皮細胞が細胞周期停止因子を失い細胞形質変換を起こしている可能性と、一方ではもともとp27を発現抑制されているポーマン嚢上皮細胞の分裂増殖が関与するという二つの可能性が考えられた。この結果はAJKD,1998;32:962-969および現在投稿中の論文にまとめた。 この糸球体上皮細胞の形質変換が起こるのか、起こらないのか、さらにそれを調節する因子について検討するためにin cvitroの実験を開始した。Green fluorescent proteinをcarryしたトランスジェニックマウスにおいて糸球体上細胞が蛍光を発することが分化と平行するかを検討した結果、新生仔マウスではcapillary-loop stageにおいてはじめて発光した。さらに、器官培養でも、糸球体上皮細胞が足構造を形成するのと一致することから、このマウスに挿入された遺伝子は糸球体上皮細胞の分化と密接な関連があり、分化の転写因子の発見に有用なtoolであると考えられる。現在、この細胞のクローニングを行っている。
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