研究概要 |
本研究は、糸球体上皮細胞の細胞周期停止・分化の分子機構を明らかにすることを目的としている。平成10年度には糸球体上皮細胞分化過程での細胞周期抑制因子(CKI)の特異的発現と細胞分化が一致すること、ヒト腎疾患の生検材料において糸球体硬化部位を被覆する細胞はボーマン嚢上皮細胞の形質であり、CKI発現がみられないことを見いだした。これらより、糸球体上皮細胞の脱分化あるいはボーマン嚢上皮細胞の代償性の増殖があることが示唆された。そこで、平成11年度には糸球体上皮細胞のin vivo分化増殖について確立されたcell lineを用いてIL-4の反応を調べた結果、増殖しドーム形成することが分かった。一方GFPマウスで検討中の分化についての解析は糸球体上皮細胞の分化特異的に発光することが、胎児マウスなどの発生過程の組織観察,器官培養での糸球体形成からの解析からわかり、このpromoterの活性と糸球体上皮細胞の分化は密接に関連していることが推察された。一方、P27,p57が共発現する糸球体上皮細胞において、どちらが有意な機能的意義があるかについて器官培養系で検索した。その結果、培養するにつれてp27の発現は有意に上昇したが、P57は減少した。以上を総括すると、糸球体上皮細胞とボーマン嚢上皮細胞はCKIsにより異なった調節を受けており、糸球体障害にはCKIsの発現の強い糸球体上皮細胞が細胞死した後には再生せず、代償性にCKIsの発現の低いボーマン嚢上皮細胞がこれを覆うことが明らかとなった。そして、糸球体上皮細胞の分化にはCKIsのうちp27が有意に機能することが示された。
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