研究概要 |
日本人の消化管内分泌細胞腫瘍群とカナダ国Ontario州Hamilton市McMaster大学Medical Centreの消化管内分泌細胞腫瘍群とを病理学的・分子病理学的に解析し、以下の知見を得た。 「組織発生」カルチノイド腫瘍は幼若内分泌細胞に由来することを示した。内分泌細胞癌は、(1)通常型分化型腺癌および腺管絨毛腺腫、(2)多分化能幹細胞、(3)カルチノイド腫瘍、(4)幼若内分泌細胞からの発生が想定され、高頻度の経路は(1)であり、特に、粘膜内分化型腺癌深層部に発生した腫瘍性内分泌細胞クローンの選択的増殖により形成される内分泌細胞癌が最も多いことを明らかにした。さらに、内分泌細胞癌の組織発生に関して、染色体欠失およびp53遺伝子異常の検索からも上記を支持する成績を得た。 「浸潤・進展、転移」免疫組織化学的にカルチノイド腫瘍はKi-67陽性細胞率1〜2%以下、p53陽性腫瘍頻度0%であり、内分泌細胞癌はそれぞれ20〜50%、40〜50%であり、両腫瘍が増殖能と悪性度とを異にすることを示した。 「病態把握と産生物質」ホルモン検索による病態把握のためには、本腫瘍群を好銀性カルチノイド腫瘍(マーカーホルモン:部位別に特徴的なペプチドホルモン)、銀親和性カルチノイド腫瘍(セロトニン)、内分泌細胞癌(セロトニン)に亜分類するべきことを示した。原発巣でのホルモン産生の特性は転移癌でも保持されることを示した。産生物質の検索が病態把握に有用であることを示した。 「培養株」内分泌細胞癌株が母腫瘍の機能的特性(セロトニン、ペプチドYY,腸グルカゴン、カルシトニン産生)を良く保持していること、食道内分泌細胞癌由来株にはVincristinとMitomycin Cが有効であったが、他の株では有意な効果は得られないことを示した。
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