研究課題/領域番号 |
10670158
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松浦 成昭 大阪大学, 医学部, 教授 (70190402)
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研究分担者 |
玉木 康博 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (10273690)
富田 尚裕 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (00252643)
河口 直正 大阪大学, 医学部, 助手 (70224748)
吉川 秀樹 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (60191558)
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キーワード | 骨転移 / インテグリン / 細胞運動 / 遺伝子導入 |
研究概要 |
インテグリンα4β1を発現した腫瘍細胞が骨転移をおこすメカニズムを解明する目的で、種々の細胞生物学的検討を行った。Chinese hamster ovary(CHO)細胞にインテグリンα4鎖cDNAを遺伝子導入し、α4β1を強制発現した細胞(α4-CHO.WT)およびリガンドとの接着に重要なアミノ酸を他のものに置換した変異型α4鎖cDNAを遺伝子導入した細胞を用いた。後者として、197番目のアミノ酸(スレオニン)、199番目のアミノ酸(グリシン)をそれぞれアラニンに置換したもの(α4-CHO.G197A、α4-CHO.G199A)を用いた。いずれも野生型とは異なり、リガンド(CS-1、VCAM-1(Vascular cell adhesion molecule-1))との接着性が消失している。これらの細胞のリガンドに対する運動性をBoyden chamber assayで、浸潤性をMaatrigel chemoinvasion assayで、リガンド上での増殖性をMTT assayで評価した。その結果、野生型ではリガンドに反応して、細胞遊走、湿潤が認められたのに対して、変異型では見られなかった。細胞増殖は野生型と変異型の間で大きな差は見られなかった。リガンド上での形態の変化を検討すると、野生型は15分後から接着、伸展が見られ、3時間後でピークとなったのに対して、変異型は接着・伸展は示さなかった。ヌードマウスにこれらの細胞を静脈内投与すると、野生型は肺転移、骨転移をともに高率におこしたのに対して、変異型は肺転移はみられたものの、骨転移は認められなかった。この結果から、α4β1を介した接着は骨転移に重要な役割を果たすが、それは主として細胞遊走により働いていると考えられた。今後、乳癌、前立腺癌など骨転移を高頻度におこす癌細胞におけるインテグリンα4β1の発現を調べるとともに、その機能をブロックすることによる治療法の開発を検討していく。
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