研究概要 |
末梢性肺腺癌21例中13例(62%)に、65病巣(Low:High=45:20)のAAH病変を認めた。免疫染色の結果SP-AおよびproSP-CはAAH全病巣に中等度以上に陽性であったがCC10は全病巣に陰性であり、AAHの異型細胞が肺胞II型上皮細胞の表現形質を呈することが認められ、AAHの肺胞II型上皮およびその前駆細胞由来が示唆された。proSP-Cは異型度の増加ならびに原発巣の分化度の低下とともに発現の低下が顕著であり、AAH混在腺癌病巣においても、proSP-C発現は腺癌部分において低下した所見を認め、AAHから癌への進展に伴うII型肺胞上皮の表現形質の低下が示唆された。また、proSP-Cは正常部の細気管支クララ脂肪には明らかな発現は認めず肺胞II型上皮細胞の特異的マーカーとしての有効性が期待された。p53,Ki-67 indexも異型度の増加とともに増大し相関を認めた(p<0.0001)。AAHおよび核最大径、ならびに核面積平均値はそれぞれ軽度異型群1.7mm、7.22μm、28.23μm^2、高度異型群3.7mm、8.20μm、36.01μm^2であり、各群間に有意差を認め(p<0.0001)、組織学的異型度評価との妥当性が示された。さらに、5mm以上の4病巣は全て高度異型群であった。マイクロディセクションDNA採取法によるPCR-SSCP解析においては原発巣、AAH両者とも検索し得た12症例中原発巣4症例にexon 5のp53遺伝子変異を認め、うち1例中の軽度異型AAH1病巣に原発巣と同様の変異型バンドを認めた。
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