研究課題/領域番号 |
10670166
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
蓮井 和久 鹿児島大学, 医学部, 講師 (70198703)
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研究分担者 |
佐藤 榮一 鹿児島大学, 医学部, 教授 (60004579)
出雲 周二 鹿児島大学, 医学部, 教授 (30143811)
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キーワード | 高感度組織化学 / HTLV-1 / Tax / Rex / E2F / ATLL |
研究概要 |
今年度は、まず、今までのHTLV-1のproviral DNA、mRNAと関連蛋白を標識する超高感度組織化学を総括して、特に、関連蛋白のp40Tax蛋白(Tax)とp27Rex蛋白(Rex)のmodified ImmunoMax法での検出について日本リンパ網内系学会総会(1998年、熊本)のシンポジウム“ATLの20年"で追加発言として発表し、それぞれの組織化学の現状を把握し、そのreviewは日本リンパ網内系学会会誌(第39巻1号)に印刷中である。 HTLV-1関連の超高感度組織化学の中でも前記のTaxとRexのmodifeid ImmunoMax法は、最も高率にATLL上の組織中のリンパ腫細胞を標識していたので、ATLL一例で、4つの生検された扁桃組織とリンパ節で異なる細胞組織像を呈するリンパ腫細胞でのTaxとRexの発現の検出を試みたところ、低悪性度の組織像を示す扁桃組織ではリンパ腫細胞は極々少量のTaxとRexを発現するのみであり、多形細胞像を示すリンパ腫は多量のRexの発現とRexよりは少量のTaxの発現を示した。対象としたMT-2細胞では、多量のTaxの発現と極少量のRexの発現が見られたことから、in vivoのATLL細胞では、TaxもRexもその発現を検出できない相と検出できる相が同一症例で観察される可能性が示唆されると共に、従来、Taxの検出がin vivoでの検出が困難であるとされて来たのが、in vivoのATLL細胞ではHTLV-1関連細胞株と比較して多量のRexの産生があり、そのRexによって、Taxの産生が抑制された状態にあることで説明できることが明らかになった(この検索は、現在、Pathology Internationalに投稿中である)。一方、上記の検索では、ATLLであることを常に組織化学によって診断するには、HTLV-1の組み込まれたproviral DNAの高感度標識の必要性も示唆された。そこで、FITC標識のPCRプライマーを用いたPCRでのFITC漂識一本鎖DNA probeの作製を行ったが、このprobeでのDAKO GenPoint法での高感度in-situ hybridization(ISH)では、充分な検出が出来ないことが明らかとなり、FITC-12-dUTPでの高度FITC標識2本鎖DNAの作製を行った。次年度に、このprobeを用いた超高感度ISHの開発を行う予定である。 一方、HTLV-1のTaxによる細胞増殖を誘導する最終段階の過程は、Rb蛋白に結合して安定化しているE2F-DP-1複合体の放出と核への以降による細胞周期でのG1期からS期への進行であることが、吉田光昭らの研究で明らかにされたので、E2FとDP-1の高感度免疫染色によるATLLの細胞増殖の動態の検索を行った。その結果、検索した10例のATLLの8例例で、E2F-DP-1複合体をATLLの細胞質か核に検出して、HTLV-1のTaxの造ATLL作用の多くはこの最終過程に帰着する可能性が示唆された(この研究成果は、日韓リンパ網内系ワークショップ、国際レトロウイルス会議、日本リンパ網内系学会等で報告の予定である)。
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