研究概要 |
初年度に当たる本年は複雑で多様性のある,T-cell receptor(TCR)β鎖再構成のpolymerase chain reaction (PCR)in situ法の完成を目指した.PCR in situ法の大筋はNuovoのプロトコール(PCR in situ hybridization:protocols and applications,Third Ed,New York,Raven Press,1997)に則り,PCR装置(Atto社)にプレパラートの載せられるアルミブロックを装着してDNAの増幅を行った.primerとしてはPCR法にてTCRβ鎖の再構成をパラフィン切片を利用して証明したDissら(J Clin Pathol48:1045,1995)と同じものを作成し,その後は当教室で行っているin situ hibridization(ISH)法を踏襲した.形態学的研究にはホルマリン固定パラフィン包埋材科が形態保存に優れているが,DNAの保存状態は悪い.そこで以下のような工夫を取り入れた.PCR用のチャンバーは山王ら(臨床検査42:996,1998)の提唱した2枚のスライドグラスの間にマニキュアで厚みをつくり,パップペンで囲んで封じ込め,周辺をミネラルオイルでシールした.ISH時にはhybridizationの際に乾燥しないようにprobe液にカバーグラスをかけたあとペーパーボンドでまわりを覆った.ISH用のhybridization probeはPCR-DIGプローベ合成キット(Boehringer Mannheim社)を用いて作成した. いきなり菌状息肉症の初期病変で行うと標的細胞が乏しいため,pilot studyとしてMT2 cellを培養して半分を使ってホルマリン固定パラフィン包埋のセルブロック作成した.残りの半分からDNAを抽出してPCR法により増幅して泳動により陽性バンドを確認してから,陽性に出たprimer setを使ってPCR in situ法を試みた.アルカリフォスファターゼで発色させたところ,一部の細胞に陽性所見が得られた.今後さらに改良を加えこの同定法を確実なものとし,菌状息肉症の初期病変に応用していきたい.
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