研究概要 |
これまで明らかになった癌患者T細胞や抗体が免疫反応を起こす腫瘍抗原の一群に、Cancer-Testis(CT)抗原がある。この抗原は、発現が各種腫瘍と正常組織では免疫系から遮断されている精巣に認められことから、腫瘍免疫療法の標的として理想的ではないかと期待されている。本研究は昨年度に引き続き、新規のCT抗原の単離を、SAGE法(serial analysis of gene expression)でcDNAサブトラクションを行なうこと、およびSEREX法(serological identification of antigens by recombinant expression cloning)で癌患者血清中のIgG抗体を利用することにより行った。 SAGE法:精巣組織RNAからSAGEライブラリーを作製し、約20.000tagのシークエンスを行った。これらのtagの解析を行ったところ、12,400の遺伝子が含まれており、既知のCT抗原はSCP-1が1tag見られたのみで、他の発現は認められなかった。次に、公開されているSAGEデーターベースを利用し、30種のライブラリーからの約120万tagデータを用いサブトラクションを行った。その結果、精巣特異的と思われる遺伝子が約3,700で、精巣と腫瘍に見られるものが約2,000であった。CT抗原の発現量が予想より低いことから、他の方法によりさらに絞り込まなければ解析は困難であることが明らかになった。 SEREX法:精巣からファージ発現cDNAライブラリーを作製し、2名の膵癌患者血清を用いて、スクリーニングを行った。1個の新規遺伝子が膵癌と精巣にのみ発現していたことから、CT抗原であることが明らかになった。現在さらに検討を行っているが、この遺伝子に対する抗体が腎癌患者血清からも認められた。
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