研究概要 |
脳腫瘍の血管新生過程における増殖因子、特にVascular endothelial growth factor(VEGF)の関与について検討した。ヒト原発性、及び転移性脳腫瘍手術切除標本を用いてVEGF,VEGF受容体(VEGFR)のモノクローナル抗体を用いてその局在を検討し、免疫組織化学的には腫瘍新生血管内皮細胞に共に局在を認めた。更にその遺伝子レベル局在を検討するため我々が作製したprobeを用い、in situ hybridization法を用いて、VEGF mRNAの局在を検討した。VEGF mRNA腫瘍細胞、腫瘍進展部周囲の反応性astroglia、転移性脳腫瘍間質内の細胞の他に新生血管内皮細胞にもその局在を認め、脳腫瘍における血管新生のメカニズムには従来から主張されているバラクリンシステムのみならずオートクリンシステムも関与している事を明らかにした.更に、VEGFで惹起される新生血管は通常の脳内毛細血管と異なり、有窓血管であり、脳血液関門を有さないとされているが、我々は抗P-glycoprotein及び抗tight junction抗体を用いて、VEGF,VEGFRを免疫組織化学に発現する新生血管内皮にその局在を認め、新生血管内皮も正常脳毛細血管の性質を有し、機能的に脳血液関門を有している可能性を報告した。ラット新生仔を用いてVEGF mRNAの中枢神経系内における局在の経時的変化をin situ hybridization法を用いて検索し、小脳のPurukin細胞また海馬の神経細胞に局在を認め神経細胞がvasculogeneisisに重要な役割を示す事、毛細血管内皮細胞に局在を認め、vasculogenesisに於いてもオートクリンシステムが関与する事を示した.
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