研究概要 |
解離性大動脈瘤を対象として、年齢・性の一致する対照群との間で、電顕的ならびに膠原線維・弾性線維代謝に関わるMMP、TIMPに対する抗体を用いた免疫組織化学的観察を試みた。 電顕により、解離性大動脈の破裂部周囲の内膜・中膜には、通常の数倍の太さを持ち、螺旋状に捻れを示すが、通常の横紋周期を呈するspiraled collagenが多量且つ高頻度に出現していた。同時に弾性線維も細くなり、断裂を示していた。これらの周囲に存在する平滑筋細胞の基底膜にも菲薄化、消失がみられた。すなわち、これらの所見は、線維性蛋白の変性性の所見と考えれるた。又、免疫組織化学により上記部分の平滑筋細胞の胞体中に、MMP-1,-2,-9,の発現が亢進し、これらの阻害酵素のTIMP-1、-2の亢進も見られたが、層板状の壊死部分には、これらの発現は見られなかった。即ち、大動脈解離の生じる前から、これらの酵素が作用し、線維性蛋白の変性を起こして、解離に連なったものと思われた。解離発生には、ずり応力などの血行力学的負荷が重要と考えられ、更に、高血圧が、この過程を強調させる負荷となるものと思われる。
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