研究概要 |
副甲状腺ホルモン関連蛋白質(PTHrP)と副甲状腺細胞の増殖能がいかなる関係にあるかを調べるため、まず結節状副甲状腺過形成をモデルとして検討した。PTHrPの発現は免疫組織化学とin situ hybridization法で確認し、増殖期にある副甲状腺細胞(PCNA標識細胞)の密度を計測し、PTHrPと細胞の増殖能を比較検討した。その結果、PTHrPを発現した細胞群では有意に細胞増殖能が低下していることを示した(Kidney Int.55:130,1999)。 次いで副甲状腺癌のPTHrP発現について検討した。副甲状腺癌は例致が少なく、虎の門病院症例、東京女子医大症例、Uppsala大学ならびにkarolinska研究所症例を併せ35例について検討した。副甲状腺癌症例では利用可能な凍結保存組織が乏しいため、PTHrPの発現は全てパラフィン包埋標本を用いて免疫染色並にin situ hybridization法で検討した。その結果、PTHrPの発現が見られたのは35例中3例のみで、腺腫、過形成に較べ発現率が極めて低かった。又、PTHrP発現の見られた症例でもその発現パターンは細胞質内に少数顆粒状に見られるのみで、これもまた腺腫、過形成とは大きく異なっていた。これらをまとめると、副甲状腺癌ではPTHrPの発現は染色、過形成に較べると抑制された状態にあることが明らかとなった。一方、細胞増殖能ではPCNA標識率は癌では腺腫に較べ有意に高値であった。 以上より、副甲状腺癌での細胞増殖能の亢進はPTHrPの抑制と密接な関係のあることが分かった。
|