研究概要 |
遺伝性網膜芽細胞腫の患者には治療後に二次性原発性腫瘍が発生する危険性が高く、骨肉腫がその中でもっとも発生頻度が多く、次いでその他の軟部肉腫の発生が知られている。 本年度の研究において6例の両眼網膜芽腫の患者に続発した横紋筋肉腫の臨床病理学的、免疫組織化学的検討を行った。患者は男性2人、女性が4人で、二次性腫瘍発症時年齢が1歳4ヶ月〜7歳11ヶ月(平均5歳9ヶ月)であった。腫瘍は全て網膜芽腫の放射線照射野内の側頭筋内に発生していた。24ヶ月から72kヶ月のfollow-upで、患者に腫瘍の再発・転移は認められていない。組織学的に、腫瘍は全て小型円形細胞が密に増殖し、不完全な胞巣パターンを示す胞巣型横紋筋肉腫であった。特徴的な所見として4例に血管周囲性のロゼット形成が目立っていた。免疫組織化学的に、myogeninを含めた筋原性マーカーが6例全てに陽性で、その他vimentinが6/6例,neurofilament l50KD(NF)が6/6例,cytokeratinが2/6例に陽性で、S-100,synaptophysin,GFAP,CD99,RBgene protein(pRB)は全て陰性だった。対照として通常の横紋筋肉腫では、NFは75%(15/20例),pRBは82%(14/17例)に陽性反応を認めた。遺伝子学的検索において3例の凍結材料を用いたRT-PCR法で、胞巣型横紋筋肉腫、Ewing肉腫/PNETにそれぞれ特異的なPAX3/7-FKHR、EWS-FLIlの有無を検索したが、いずれのキメラ遺伝子も検出されなかった。以上の結果から、長期間生存する遺伝性網膜芽細胞腫の患者には、放射線治療後に横紋筋肉腫が続発する症例がまれではあるが存在し、網膜芽腫の再発あるいはEwing肉腫/PNETなどの他の小型円形細胞腫瘍と組織学的に鑑別を要することが明らかにされた。さらに二次性横紋筋肉腫の発生におけるRBgeneの関与が推測された。
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