6例の両眼網膜芽腫の患者に続発した横紋筋肉腫の臨床病理学的検討を行った。腫瘍は全て網膜芽腫の放射線照射野内の側頭筋内に発生していた。組織学的に腫瘍は全て小円形細胞が密に増殖し、不完全な胞巣パターンを示す胞巣型横紋筋肉腫であった。免疫組織学的に、myogeninを含めた筋原性マーカーが全てに陽性で、retinoblastoma(RB) proteinは陰性だった。遺伝子学的研検索において、胞巣型横紋筋肉腫、Ewing肉腫にそれぞれ特異的なPAX3/7-FKHR、EWS-FLI1の有無を検索したが、いずれのキメラ遺伝子の検出されなかった。以上の結果から、長期間生存する遺伝子性網膜芽細胞腫の患者には放射線治療後に横紋筋肉腫が続発する症例がまれにではあるが存在し、網膜芽腫の再発あるいはEwing肉腫などの他の小円形細胞腫瘍と組織学的に鑑別を要することが明らかにされた。さらに二次性横紋筋肉腫の発生におけるRB geneの関与が推測された。様々な組織型を含んだ77例の骨・軟部肉腫において細胞接着因子E型カドヘリンの細胞外成分に対するモノクローナル抗体HECD-1を用いて免疫組織化学的に検討したところ、1例の多形型横紋筋肉腫、2/5例のびまん性中皮腫、4/5例の淡明細胞肉腫、1/5例の類上皮肉腫、10例全ての滑膜肉腫にその発現が認められた。その他の骨・軟部肉腫はE型カドヘリンが完全に陰性であった。この研究結果から滑膜肉腫などの上皮様形態をとる軟部肉腫において、その上皮様形態を形成する上でE型カドヘリンは一定の役割を果たしているものと推測された。さらに紡錘型横紋筋肉腫と鑑別を要する24例の胸腔外孤立性線維性腫瘍について臨床病理学的研究を行い、その組織学的多様性と潜在的悪性度を明らかにした。また3例の横紋筋肉腫を含めた成人の四肢、体幹に発生した95例の軟部肉腫を核内増殖関連抗原Ki-67(MIB-1)を用いた新しい客観的な組織学的悪性度評価を行い、その独立した予後因子としての有用性を明らかにした。
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