研究概要 |
マウスではIgf2の発現は胎生期では各臓器に見られるが、生後は脳の一部を除いて消失する。一方、マウス腫瘍ではIgf2の発現が亢進しており、また、臓器特異的にIgf2を発現するtransgenic miceではその臓器に腫瘍が発生することからIgf2のオートクライン機構は発癌メカニズムに深く関わっているものと思われる。Igf2はimprinting geneで父親のalleleのみいが発現するが、そのimprintingにはIgf2遺伝子の特定領域のメチル化と、下流に近接するH19遺伝子のメチル化が関与することが示唆されている。また、マウスIgf2遺伝子は6個のexonから成り、exon1,2,3の上流に存在する転写開始点から転写され、exon1,2,3のいずれかとexon4-6を共通に含む3種類のmRNAが生成されることが知られている。本研究ではマウス腫瘍についてIgf2のallele特異的発現及びメチル化、さらにmRNAの転写開始点を検討した。その結果、以下の点が明らかになった。 1.肝癌細胞では高頻度にloss of imprinting(LOI)が見られるが、正常肝由来の細胞ではその頻度は低い。 2.肝癌細胞ではP1、P2、P3プロモーターが活性化しているのに対して、正常肝由来細胞ではP2、P3プロモーターのみが活性化している。また、LOIの有無とIgf2の発現量には相関は見られない。 3.正常肝組織では生後間もなくIgf2の発現が消失するが、初代培養肝細胞では再び発現する。しかし、この場合にはimprintingは維持されている。 4.Igf2の5'上流にはdifferentially-methylaled region(DMR)が存在し、父親のアレルが特異的にメチル化されている。
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