研究概要 |
flaky skin(fsn)マウスは落屑と表皮肥厚を伴う皮膚炎、毛髪の萎縮脱落を特徴とする皮膚病が進行する突然変異マウスで、乾癬研究の良いモデルと考えられる。申請者は初年度に自然発症病変におけるマクロファージ・樹状細胞の分化およびサイトカインの発現を検討した。 funマウスでは、1)前胃の乳頭状扁平上皮増殖 2)肝、牌の炎症細胞浸潤 3)落屑と表皮肥厚を伴う皮膚炎 4)皮膚におけるLangerhans細胞と肥満細胞の増加 5)赤牌髄の拡大と白牌髄の不明瞭化 6)リンパ節への形質細胞浸潤 7)肝門脈域への単核球浸潤 8)肝、皮膚炎症巣における樹状細胞の増加 9)牌濾胞辺縁帯マクロファージの減少 10)肝、皮膚におけるサイトカイン(IL-1,IL-4,IL-6,IFN-γ)の産生増加を認めた。 以上、本マウスでは皮膚病変に加え、多くの組織において種々の病変が発現し、肝牌腫は組織学的変化を反映していた。このマウスには原因不明の強い貧血がみられ、赤牌髄の拡大は代償的な造血亢進を意味しているものと考えられた。肝においても赤芽球造血が観察され、本マウスは髄外造血の観察にも有用と思われる。 ヒト乾癬病変ではEFG受容体とIL-4受容体の発現増強が知られている。本マウスでもEGF受容体の発現亢進が既に明らかにされており、表皮の増殖機序に関与していると推測される。しかし、IL-4受容体については明らかでない。本研究では皮膚、肝においてIL-4をはじめとするサイトカインmRNA発現増強を確認した。IL-4はBリンパ球や樹状細胞の分化を制御することが知られているが、本マウスのリンパ節に形質細胞の強い浸潤があり、炎症巣中に樹状細胞が増加していたことから、IL-4が本マウスの病態に重要な意義を有するものと考えられた。他のサイトカインの発現が亢進していた意味については今後の検討が必要である。
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