研究概要 |
flaky skin(fsn)マウスは1985年にジャクソン研究所で見いだされた突然変異マウスで、ヒト乾癬にきわめて近似した皮膚病変を呈する。本研究では病態を観察し、炎症細胞、ことにマクロファージと樹状細胞の動態と意義を明らかにすることを目的として行った。初年度の組織学的検索では、fsnマウスは、1)前胃の乳頭状扁平上皮増殖 2)肝、脾の炎症細胞浸潤 3)落屑と表皮肥厚を伴う皮膚炎 4)皮膚におけるLangerhans細胞と肥満細胞の増加 5)赤脾髄の拡大と白脾髄の不明瞭化 6)リンパ節への形質細胞浸潤 7)肝門脈域への単核球浸潤 8)肝、皮膚炎症巣における樹状細胞の増加 9)脾濾胞辺縁帯マクロファージの減少 10)肝、皮膚におけるサイトカイン(IL-1,IL-4,IL-6,IFN-γ)の産生増加を認めた。さらに、本マウスでは皮膚病変に加え、多くの組織において種々の病変が発現し、肝脾腫は組織学的変化を反映していた。このマウスには原因不明の強い貧血がみられ、赤脾髄の拡大と肝の赤芽球造血は代償機能亢進を意味しているものと考えられた。 次年度はリンパ装置の細胞群について解析した。脾、リンパ節では、Tリンパ球の絶対数は増加したが比率の低下が認められ、Bリンパ球は増生し、免疫グロブリン産生異常も示唆された。表皮の樹状細胞についても検討を行った。本マウス表皮内には経時的にIa陽性のLangerhans細胞が増加し、それとともにThy-1+樹状細胞も増加した。背部、耳における両細胞は足よりも多かった。真皮内では基底細胞層に近接してマクロファージや肥満細胞が増加した。これらの変化はIL-4をはじめとするサイトカインの発現増強と関連すると考えられた。今後これらの知見は本マウスの乾癬発症機序の解明に有用な鍵になるものと思われる。
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