研究概要 |
ラット糸球体培養で得られたマクロファージ様細胞を免疫抗原としてモノクローナル抗体OS-3を作製した。OS-3はWKYラット馬杉腎炎モデルでの半月体と反応することから、OS-3をマーカーとして半月体形成機序の解析を免疫組織化学的に行い、さらに対応分子の検索を実施した。 OS-3は培養糸球体細胞でのマクロファージ様細胞に反応するが、正常ラット腎のボーマン嚢上皮細胞の一部および皮質集合管間在細胞のタイプB細胞に陽性であった。WKYラット馬杉腎炎モデルでは抗基底膜抗体投与後、1日では変化がみられなれなかったが、3日目より糸球体内の細胞に陽性となり、2週目に形成される半月体細胞に強く反応した。しかしながら、2か月後にはその反応性が弱まり、換わってボーマン嚢上皮細胞と皮質集合管の一部に強く反応した。ED-1とOS-3との二重染色で半月体構成細胞には各々単独および共通に反応する細胞が観察された。一方、正常ラット糸球体より抽出した材料を用いたWestern blottingでは、対応分子が43kDの蛋白分子である結果を得た。 以上の結果から、WKYラット馬杉腎炎モデルでの半月体は外来性マクロファージのほかにOS-3陽性の腎固有細胞より構成されることが示唆された。また、対応分子は酸塩基平衡に関与するタイプB細胞にも存在し(Yanase H,Orikasa Metal.Arch.Histol.Cytol.61,1998)、WKYラット馬杉腎炎モデルの後期にそれが強く発現することから、半月体形成機序に関与する機能分子である可能性も示唆された。 現在、免疫電顕で対応抗原の局在とcDNAのクローニングによる分子の性状を検索する共に、半月体形成機序と糸球体培養により得られるマクロファージ様細胞との関係を解析している。
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