研究課題/領域番号 |
10670198
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研究機関 | 福井医科大学 |
研究代表者 |
内木 宏延 福井医科大学, 医学部, 教授 (10227704)
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研究分担者 |
下条 文武 福井医科大学, 医学部, 教授 (20126410)
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キーワード | アルツハイマー病 / βアミロイド線維 / 重合核依存性重合モデル / アポリポ蛋白E / 抗酸化剤 / ロジスティック方程式 |
研究概要 |
1. 緒言:我々を含む数グループにより、アルツハイマー病βアミロイド線維(fAβ)の試験管内形成過程を説明するモデルとして、重合核依存性重合モデルが提唱されている。一方最近、アポリポ蛋白E(apoE)等の生体分子、あるいは抗酸化剤等の有機化合物が、fAβの試験管内形成を阻害することが相次いで報告されている。今年度は、アルツハイマー病発症機構において、Aβ1-40より重要と考えられているAβ1-42からのfAβ形成過程を精密に測定する実験系を確立し、apoE、及び抗酸化剤の持つfAβ形成阻害機構を反応速度論的に比較解析した。 2. 方法、及び結果:(1)合成Aβ1-42(Bachem社)を0.1%アンモニア溶液に溶解後、溶液中に存在するfAβを超遠沈法により除去し、ほぼ完全なモノマー溶液を作成した。Aβ1-40は蒸留水に溶解した。(2)Aβ1-42、及びAβ1-40をpH7.5、37℃でインキュベートすると、そのタイムコースは特徴的なシグモイド曲線を描く。我々は、このシグモイド曲線がロジスティック方程式により記述できることを明らかにした。この曲線の数学的解析により、線維形成速度が最高になる時間(t1/2)の測定が可能になり、Aβ1-42がAβ1-40に比べはるかに速く線維を形成するが、それぞれの線維形成過程は本質的に同一であることを見出した。(3)apoE、及び抗酸化剤は、両AβからのfAβ形成量を濃度依存性に減少させた。(4)一方、apoEはt1/2を濃度依存性に延長したが、抗酸化剤を添加してもt1/2は変化しなかった。 3. 結語、及び来年度計画:今年度の研究により、apoEと抗酸化剤の試験管内fAβ形成阻害機構が異なることが明らかになった。来年度は、apoE、及び抗酸化剤が、βペプチドの二次構造、特にβシート構造比率に及ぼす効果を、CDスペクトルにより解析する。
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