研究概要 |
血小板由来増殖因子B鎖(PDGF-B)が脳神経細胞で、虚血や特定の発達時期に特殊な機構により発現されることを示してきた。今回はPDGF-Bの虚血や発達における機能的役割解明を目的とした。 虚血でのPDGF-B機能解明のため、ラット腎虚血再灌流後の再生モデルにtrapidil,Ki6896の2種類のPDGF-B阻害剤を投与した。再生腎尿細管上皮細胞にPDGF-Bおよびα-、β-受容体発現誘導を見い出した。2種類の抑制剤は、虚血後の腎機能不全を増悪させ、また、組織学的にも上皮再生の抑制を示した。(Am J Pathol 1999)。PDGF-Bが腎臓尿細管の虚血再灌流後の障害抑制あるいは再生促進に機能することを明らかにした。 新生仔ラット低酸素/虚血モデルで、PDGF-Bと受容体発現があることをしめし、発達期の脳障害でもPDGF-Bが重要であることを示した。(Neuroscience 1999)。正常新生仔ラットに2週間のtrapidil投与を行うと小脳低形成が認められた。しかしながら、全身低栄養による2次的変化であることが否定できずpublishに至っていない。RDGF-B anti-sense oligo投与により虚血抵抗性低下を観察したが、control oligoでも軽度の抵抗性低下があり明確な結論に至らず。脳におけるPDGF-B機能解明の困難さに直面し、現在これを打開するためにknockout model作製に発展しようとしている。脳におけるHeparin-binding EGFが新生仔脳傷害およびglutamate投与により発現誘導を受けることを明らかにし、同因子が神経賦活因子として作用する可能性を示した(Brain Res.1999)。 その他、淡蒼球-黒質-ルイ体変性症におけるtau蛋白の遺伝子異常を見い出した(Neurology 1999)。また、独自に有する遺伝性癲癇ラット脳のMossy fiber異常について報告した(Brain Res 1999)。
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