当該研究課題の目的は、発達や虚血脳におけるPDGF-Bの役割を明らかにすることである。 1.脳cDNAから2.6および3.5kbの2種類のPDGF-BmRNAを分離した。2.6kbのPDGF-BmRNAは、3.5kbmRNAのtruncated formであり、虚血や発達期の神経細胞におけるPDGF-B蛋白発現に重要であることを示した。 2.ラット新生仔低酸素/虚血脳症では、壊死周囲で生存する神経細胞でPDGF-Bと同β受容体発現誘導があった。新生仔脳神経細胞の保護における役割を示した。 3.ラット腎一過性虚血負荷後の再生尿細管上皮にPDGF-Bおよびβ受容体発現がみらた。TrapidilおよびKi6896のPDGF-B阻害剤は腎臓機能回復阻害、尿細管上皮再生抑制を来たした。PDGF-Bは障害からの細胞の再生に重要である。 4.砂ネズミの一過性前脳虚血モデルにおける海馬でのPDGF-B発現や視神経切断モデルにおけるPDGF-B発現は、apoptosisに先行して減少、細胞死を免れる領域では増加した。PDGF-Bが神経細胞生存に重要であることを示した。 5.現在、antisense-oligonucleotideによる抑制実験を継続し、新生仔脳でPDGF-Bがシナプス伝達の調節因子として重要であることを示す結果を得つつある。今後さらに、脳におけるPDGF-Bの機能を解明するための研究を継続する予定である。 6.脳神経細胞やグリア細胞にHeparin-binding(HB-)EGFが広範囲に発現し、発達や障害で発現誘導があった。脳EGF受容体のligandとして重要であることを示した。 7.人の遺伝性神経変性疾患である淡蒼球―黒質―ルイ体変性症におけるtau遺伝子異常を報告した。遺伝性癲癇ラットの脳においてmossy fiberのhypertrophyを示した。
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