研究概要 |
平成10年度の研究により遺伝性てんかんラット(IGBR)の海馬領域にみられる微少神経形成異常は、遺伝的に決定された形成異常であることが確認された。平成11年度では、神経細胞の移動障害の機序を解明する為にためにBrdUを用いた神経細胞の分裂・移動のトレーサー実験を行った。 研究は形成異常を来す神経細胞の最終分裂日の特定とその移動部位を明らかにする実験(実験1)と、海馬原基で最終分裂した神経細胞が海馬へ移動する経時的過程を明らかにする実験(実験2)によって構成された。実験1:受精15日より22日までの妊娠ラットにBrdUを投与し,胎児脳にBrdUを取り込ませる。生後4週日に屠殺し微少神経形成異常に関わる細胞の分裂日と、移動部位を BrdU免疫組織化学によりトレースした。その結果胎生15日から20日に分裂したすべての細胞が錐体細胞層の配列異常に関与しており、胎生16に分裂した神経細胞が配列異常の主体を占めていた。実験2:妊娠16日目のIERおよび対照ラットにBrdUを投与し胎児脳にBrdUを取り込ませた。最終投与後1時間,1日,・・,6日目の胎児脳、および出生当日(P0),2日後(P2),・・,P14の仔ラット脳における神経形成異常構成過程をBrdU免疫組織化学によりトレースした。その結果IGERでは分裂細胞は原基部位より、より早くintermediate zone(IMZ)へ移動し、長い期間IMZに留まり、最終移動部位である錐体細胞層やSt.rad.への移動が遅れることが明らかとなった。以上のようにIGERでは胎生16日分裂する細胞が配列異常の主体を占め、これらの細胞は早期にINZに移動し同部で長く留まり、錐体細胞層、St.radへの移動が遅延することが明らかとなった。
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