研究概要 |
マスト細胞は造血幹細胞より由来するが、前駆細胞の段階で造血組織を離れて、末梢血中を移動し、種々の組織に侵入後、増殖してからマスト細胞に分化する。この際、最終的に分化する組織によってマスト細胞の分化形質が異なる。マウスのマスト細胞では4個のキマーゼ(MMCP-1,2,4,5)と2個のトリプターゼ(MMCP-6,7)さらに1個のカルボキシペプチダーゼ(MC-CPA)と7個のマスト細胞特異的プロテアーゼをコードする遺伝子がクローニングされている。本研究では、マスト細胞の表現形質に与える因子をマスト細胞特異的プロテアーゼの発現をマーカーとして調べた。まずマウスの系統によるプロテアーゼの発現の差を調べた。その結果、WBおよびWBB6F_1マウス由来の培養マスト細胞でMMCP-2が発現しているのに対して、C57BL/6マウス由来の培養マスト細胞ではMMCP-2が発現しないことがわかった。またWBB6F_1マウスでは胃粘膜のマスト細胞で、MMCP-2を発現しているが、C57BL/6マウスでは発現していない。それに対して胃の筋層のマスト細胞ではF_1マウスでもC57BL/6マウスでもMMCP-2の発現はみとめられなかった。これらのことより、MMCP-2の発現はマウスの系統とマスト細胞をとりまく環境の両方によって変わることがわかった。次に培養マスト細胞や腹腔マスト細胞を遺伝的にマスト細胞を欠損しているWBB6F_1-W/W^Vマウスの組織に移植すると、移植した組織によってそこにみられるマスト細胞の性質が異なることが知られている。そこでおのおのの種類のマスト細胞が組織環境によって、プロテアーゼ遺伝子の発現をかえるかどうかについて検討した。10^5個の培養マスト細胞を移植した場合そこにみられるマスト細胞はMMCP-2,MMCP-4,MMCP-6の発現パターンが正常マウスと同じであり、置かれた環境に順応した。一方、10^5個の腹腔マスト細胞を注射した場合は組織環境に順応せず、培養マスト細胞の場合と違うことがわかった。現在、この培養マスト細胞と腹腔マスト細胞の違いについて詳しく検討している。
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