I.drs遺伝子の機能解析 我々がv-srcによるトランスフォーメーションを抑制する活性を持つ遺伝子として新規にクローニングしたdrs遺伝子は膜貫通ドメインとセレクチンファミリーなどに保存されているsushi motifを3つ持っており細胞膜上で働くシグナル分子である。drsは大腸癌など種々のヒト癌細胞株や悪性癌組織でそのmRNA発現が著しく低下している。またこれらのヒト癌細胞株にdrs遺伝子を導入し高発現させると悪性化形質(足場非依存性増殖や造腫瘍性)が抑制されることからdrsはヒト癌発生に対して抑制的に働く新しいタイプの遺伝子であると考えられる。本研究ではdrs遺伝子がどのような機構で癌化を抑制するのかを解析し以下の結果を得た。 1)drsはヒト癌細胞株においてサイクリンA mRNAの発現抑制を介して足場非依存性増殖を抑制する。またこの抑制活性にはdrsの膜貫通領域の外側の3つのconsensus repeatと内側の両方の領域が必要である。 2)抗Drs抗体と種々のdeletion mutantを用いてDrs蛋白が細胞膜上でconsensus repeat領域を外側にして膜貫通領域で互いに会合していることを明らかにした。 3)新たにsplicing variantを含む2種類のmouse drs cDNA cloneと1st exonを含むmouse genomic cloneを分離しknockout(KO)mouseを作製中である。 II.REF特異的に発現している遺伝子群のクローニングとその機能解析 REF細胞で特異的に発現している遺伝子群のクローニングをcDNAサブトラクション法によって試み、REFで発現が認められ株化細胞F2408で発現が著しく減少しているcDNAクローンを20クローン分離した。これらのcDNA群の中でlumican遺伝子がv-src癌遺伝子による癌化を抑制する活性があることを明らかにしてきたが我々はさらにlumicanが肺癌などのヒト癌細胞株でも発現が抑制されておりlumicanをこれらの癌細胞に導入するとp21 CDK inhibitorの発現上昇とともに癌化形質を抑制することを見い出した。
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