研究概要 |
LECラットはN-ブチル-N-(4-ヒドロキシブチル)ニトロサミン(BBN)誘発膀胱発がん低感受性である。BBNの代謝活性物質であるN-ブチル-N-(3-カルボキシプロピル)ニトロサミン(BCPN)の尿中排泄量はBBN膀胱発がん低感受性のLECラットの方が膀胱発がん高感受性のF344ラットの1.7倍であった。両系統ラットで尿のpHには差がなかった。LECラットの尿中銅濃度は28週齢以降高値であった。メタロチオネインは膀胱発がん抑制作用があると報告されているが,膀胱組織のウエスタン法によるメタロチオネイン発現はLECラットの方が低かった。D-ペニシラミン長期投与によりLECラットの尿中銅を下げたところ,弱い膀胱発がん促進効果がみられた。逆に,F344ラットに銅ニトリロ三酢酸を長期投与して尿中銅を上げたところ,弱い膀胱発がん抑制効果がみられた。これらの結果は,尿中銅の弱い膀胱発がん抑制作用を支持するが,尿中銅だけではLECラットの膀胱発がん低感受性を説明できないと考えられた。(F344xLEC)F2ラット肝からDNAを抽出し,多数のマイクロサレライトマーカーを調べた結果,F344ラットとLECラットで多型を示すマーカー333個を見出した。0.1%BBNを5週間投与した183匹の雄(F344xLEC)F2ラット尾からDNAを抽出し,132個のマイクロサレライトマーカーを用いて膀胱腫瘍数と連鎖する遺伝子座の解析を行っている。今までのところ,LECラットの膀胱発がん抵抗性がこのラットで欠失しているAtp7b遺伝子と直接的に関連しているとは言えない。
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