研究概要 |
HTLV-I産生長期培養細胞、HTLV-I産生短期培養細胞、ATL患者から得られた新鮮ATL細胞、HTLV-I抗体陽性キャリアーの末血から分離されたリンパ球を用いた。検討した抗体は、CD3、4、5、25、HLA-DR、-DP、-DQ、TCRα/β、TCRα、TCRβの各抗体を用い、Labelled streptoavidin biotin peroxidase complex(LSABC)法により行った。一部新鮮リンパ球はCD4、CD8抗体に対し、未固定のまま反応させ、フェリチン標識坑マウスIgG抗体による間接法により標識状況を観察した。TCRα/β、TCRα、TCRβ抗原の発現が、培養経過と共にTCRα減弱とTCRα/βの消失、さらにTCRβのみ残存するパターンが、新鮮リンパ球、HTLV-I産生短期から長期培養細胞へと移行するにつれて明らかに観察されたことである。即ち、TCRαは粗面小胞体、核膜周囲に陽性であるが、次第に陰性化し、これと共に細胞表面でのTCRα/βの減弱もみられ、長期培養細胞ではTCRβのみが粗面小胞体に陽性となる知見を得た。本来はT細胞であるが、CD4、CD8は陰性化し、HLA-DRや-DP、-DQがCD25と共に陽性となる。CD3については、細胞膜表面のみでなく、粗面小胞体、核膜にも陽性であり、この反応も培養が長期になると減弱する傾向を示した。HTLV-Iキャリアーの新鮮リンパ球を用いたデータでは、CD4とCD8間で標識状況に明らかな差異がみられ、CD4はびまん性や斑状に表面に陽性となるのに対し、CD8はsegmentalに強陽性となる所見を呈した。これらの結果は、HTLV産生細胞は本来のT細胞としての抗原性の発現を失っており、機能的にも不全状態にあることが示唆された。また各抗原の電顕レベルでの反応性を検討することは、光顕では鑑別が難しい細胞内における抗原分布を明らかにできる点で重要であり、ヒト白血病細胞の機能解析に大いに役立つものと考えられた。又、これら抗原の反応性を電顕レベルで明らかにすることは、分子生物学的データの裏付けをするという点からも重要である。すなわちTCRα/βの消失がTCRαの減弱に端を発することや、CD4陽性リンパ球にびまん性と斑状の2種類の標識が区別でき、これがTH1、TH2細胞に相当する可能性が考えられた。またPrimary effusion lymphoma(PEL)由来のKS-1細胞とそのTPA処理細胞とで行ったHHV-8の超微形態所見では、TPA処理において核内のみでなく胞体外に放出される未熟ないし成熟粒子が多数観察され、外径250μmをこえる巨大粒子や発芽粒子も確認された。TPA未処理細胞では核内に少数の粒子をごく少数の細胞で認めたのみであった。(Ohtsuki et al,Med Electron Microδc,1999)。これらのデータはHHV-8粒子の微細構造を明らかにした貴重なデータである。KS-1細胞のマーカーでは、CD20、CD30、HLA-DR抗体によりいずれも細胞膜が陽性であった。
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