研究分担者 |
松山 俊文 長崎大学, 医学部, 教授 (30165922)
山下 俊一 長崎大学, 医学部, 教授 (30200679)
伊東 正博 長崎大学, 医学部, 助教授 (30184691)
中尾 一彦 長崎大学, 保健管理センター, 講師 (00264218)
大津留 晶 長崎大学, 医学部, 助手 (00233198)
|
研究概要 |
肝癌細胞の増殖・分化さらには接着・浸潤・転移に関してチロシンキナーゼ型の受容体シグナル伝達の重要性が着目されている。そこでラット化学肝発癌およびヒト肝細胞癌の受容体型チロシンキナーゼの発現動態プロフィールを明らかにし、その局在および発癌過程における特異性を検討した。 方法としては、化学発癌ラットの肝癌組織および正常肝組織より抽出したRNAを用い、受容体型チロシンキナーゼ遺伝子群間で相同性の高い2カ所にdegeneratedプライマーを設定し、RT-PCRを行い、そのPCR産物をサブクローンした。1組織あたり50クローン以上のシークエンスを行い、ジーンバンクデータとのホモロジー検索によりプロフィールを解析した。発現の認められたチロシンキナーゼ遺伝子に関し、遺伝子発現の経時的変化をRT-PCRやノーザンブロッティングで解析するとともに、免疫組織化学でその局在を検討した。ヒト肝癌組織においても同様の方法で検討した。 これまでの解析の結果、ラット正常肝と肝癌より23種類、ヒト正常肝と肝細胞癌より16種類の受容体型チロシンキナーゼ遺伝子の発現を認めた。その中でも、ラット肝癌ではHGF-R(c-met)が増加し、EGF-Rは減少していた。ヒト肝細胞癌ではPDGF-Rαが減少し、PDGF-Rβは増加していた。血管新生に関連するTie1,Tie2,VEGF-R2(flk-1)等の発現はヒト、ラットともに癌周囲の血管内皮に発現するとともに、flk-1,Tie1,Tie2は癌細胞にも発現を認めた。これはラットにおいては前癌病変の時期より一部発現が認められた。 以上の結果より、チロシンキナーゼ型受容体シグナルの特異的変化が、肝発癌・悪性化進展過程に重要な役割を演じていることが示唆された。(1998 DDWパネルディスカッション発表)。
|