研究概要 |
私は、成熟ラット肝臓より肝幹細胞の一種と考えられるsmall hepatocytesを分離培養し、成熟肝細胞に分化させ、肝非実質細胞との相互作用により3次元的な立体構造を構築することを見いだした。Small hepatocytesはコロニーを作るように増殖し、肝上皮様細胞や星細胞に囲まれるようになるとコロニーの上に盛り上がるように大型の細胞が増殖してくる。そのようなコロニーの縦断面を観察すると、small hepatocytesのコロニーの下に非実質細胞が潜り込んでいる。比較的扁平なsmall hepatocytesがその体積を増し立方形や直方形の細胞になっている。その大型の細胞ではミトコンドリア、ペルオキシゾーム、小胞体などの細胞内小器官が発達し、グリコーゲン顆粒を豊富に持っており明らかな成熟肝細胞であった。肝細胞と非実質細胞の間には細胞外基質が蓄積しており、基底膜様構造を形成しているものと考えられた。実際、その構造にはtypeI,typeIII,typeIV collagens,lamininの沈着が見られ、また培養細胞がそれらのmRNAを発現していること、培養液中にそれらを多量に分泌していることをNorthern blot法,Western blot法で確認した。また、small hepatocytesが3次元構造を作る時期に一致して、成熟肝細胞に発現するTryptophan 2.3-dioxygenaseやギャップ結合タンパク質であるConnexin32のmRNAが発現するようになる。又、urea cycleに関係する酵素のglutamine synthetaseやcarbamoylphosphate synthetase Iも盛り上がった細胞に強く発現するようになる。この盛り上がった細胞の上を非実質細胞が覆うと肝細胞は腺腔を作るようになった。Small hepatocytesは非実質細胞と細胞外基質の誘導により成熟化することがわかった。
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