研究概要 |
我々は、水に不溶性の紙であるKimwipe上にラット肝細胞を培養することを試みた。肝細胞はコラーゲンをコートしたセルロースの繊維上に接着し、増殖することができる(Mizuguchi et al:Artificial Organ,in press,2000)。L-15/2%DMSO(成熟肝細胞の増殖と分化の制御ができる実験系)で培養した時、数層に不規則に交差した繊維間にできたくぼみに接着した肝細胞は増殖し、くぼみを埋めるようになる。走査電子顕微鏡でそれらの細胞の表面を観察すると密生した微絨毛が覆っている。縦断面を光学顕微鏡や透過電子顕微鏡で形態学的に観察すると、2〜3層の大型の背丈の高い細胞が存在し、とくに上層の細胞はよく分化した肝細胞であった。紙の上で培養された肝細胞のアルブミンなどの合成・分泌機能は培養皿上で培養した場合と比較して非常によく維持されていた。セルロースが培養液を吸収し細胞の接着面からも栄養分が補給されるため、培養液面から遠い細胞でも壊死することがないためと推測される。 本研究からsmall hepatocytesと肝非実質細胞を組み合わせると類肝組織を培養皿上で作ることが可能であることがわかった。本研究助成期間内に生体内に移植する試みまでは到達できなかったが、その小組織ごと動物体内に移植し生着させ、生体の持つ機能を利用して第2肝臓を作ることを今後の研究目標としたい。また、個々の細胞単位では凍結保存が難しい肝細胞も、小肝組織ごと凍結保存することで長期間の保存に耐えられることが予備実験によりわかったので、培養皿上で増やした肝細胞を凍結保存し、必要なときに解凍し、移植できるようなシステムを作る研究を合わせて推進したい。
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