研究概要 |
本研究はヒ素の発がん性を動物実験において解明することを目的としている。 1. ラットの2年間発がん性実験 10週齢のF344ラット144匹を4群に分け、DMAをそれぞれ0,12.5,50,200ppmの濃度で飲料水で投与実験中である。 2. p53トランスジェニックマウスを用いた発がん性試験 8,9週齢の雄性p53ノックアウトマウス(ヘテロ接合型)と野生型(C57BL/6)合計180匹をそれぞれ3群に分け、DMAを0,50,200ppmの濃度で飲料水で投与実験中である。 3. 無機ヒ素代謝に関わるヒ素代謝産物のラット多臓器発がん性試験法を用いた発がん修飾作用の検討 6週齢のF344ラット150匹を12群に分け、第1〜6群にはBBNを0.05%の濃度で飲料水にて4週間、その後、EHENを0.05%の濃度で飲料水にて2週間投与し、その2週間後よりヒ素代謝に関わるヒ素化合物であるMMA、DMA、TMAsO、AsBe、をヒ素として100ppmの濃度で、NaAsIIIは10ppmの濃度で飲料水として投与し、また、7〜12群は発がん物質を投与せず、ヒ素のみを投与した。ラットは実験開始38週後に屠殺し、膀胱、肝、腎の腫瘍発生を病理学的に検索し、ヒ素投与開始28週後に尿中のヒ素濃度を検索した。 その結果、膀胱発癌促進作用が、DMA>MMA>TMAsOの順に認められ、無機ヒ素であるNaAsIIIや海藻類に多く含まれる有機ヒ素のAsBeには発癌促進作用は認めなかった。また、膀胱腫瘍の数と膀胱粘膜の細胞増殖能の指標であるBrdU Labeling Indexとの間に高い相関が見られた。一方、膀胱発癌促進作用と有機ヒ素の尿中脱メチル中間代謝産物の間に高い相関性が認められた。
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