研究概要 |
ヒ素は環境中に広く存在し、疫学的にその発がん性が裏付けられている。しかしながら、動物実験においては未だヒ素の発がん性は明らかにされていない。dimethylarsinic acid(DMA)は無機ヒ素のほ乳類での主な尿中代謝物である。F344雄ラットにDMAを用いて2年間の発がん性実験を施行した。その結果、50、200ppm投与群で8/31,12/31の頻度で膀胱腫瘍の発生が見られた。対照群と12.5ppm投与群では腫瘍発生は見られなかった。以上より、DMAのラット膀胱発がん性が証明された。ODCトランスジェニックマウスの皮膚にDMBAでイニシエーション後にDMAを週2回、18週間塗布した場合、皮膚発がんプロモーション作用が、TPAと同程度に発現された。DMAをNBRラットに投与したら、酸化的ストレスの指標の8-OHdGの上昇が腎において認められ、細胞増殖能の増加が認められた。また、NBRラットに膀胱発がん物質のBBNを投与後にDMAを飲料水で100ppmの濃度で32週間投与した場合、膀胱がんは発生が促進され、膀胱粘膜の細胞増殖能の亢進が認められた。一方、ラット多臓器発がん性試験法を用いて、ヒ素代謝に関わる有機ヒ素化合物であるmonomethylarsonic acid(MMA)、DMA、trimethlarsine oxide(TMAO)、とarsenobetaine(AsBe)、無機ヒ素のsodium arseniteの発がん修飾作用を検討した。その結果、膀胱発がん促進作用が、DMA>MMA>TMAsOの順に認められ、無機ヒ素であるNaAsIIIや海藻類に多く含まれる有機ヒ素のAsBeには発癌促進作用は認めなかった。
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