研究概要 |
平成10年度は、液性免疫移入により尿細管基底膜(TBM)上にin situ型免疫複合体形成を作製して過敏性尿細管間質性腎炎(TIN)を誘導することに成功し、その発症機序を解析した。陽性荷電化単量体ovalbumin(C-OA,42kDa,等電点10以上)を用い、Balb/cマウスの尾静脈から1mg/300μLを注入し,4時間後、家兎抗OA IgGの3mg/300μLを注入した。c-OAは単独投与ではTBMとボーマン嚢基底膜に24時間まで定着し、免疫電顕では尿細管上皮内ライソソームならびにTBMのlamina densaの内外側のlamina raraに分布した。さらに家兎抗OAIgGの追加投与によりin situ型免疫複合体を形成させ、96時間までその定着が延長した。^<125>Iラベルc-OAならびに^<131>Iラベル家兎抗OAIgGを用いた定量的解析も同様な結果であった。TINの誘導には、同様な処置のマウスを家兎IgGにてアジュバントともに前免疫した。家兎IgGの前免疫群において、c-OAの投与後8日目において、間質内へのマクロファージ、Tリンパ球(CD4<CD8)浸潤が顕著となった。同時期に間質細胞はαSMA陽性、尿細管基底膜之傍尿細管毛細血管にMHC class II分子とICAM-1が発現した。対照群において病変はなかった。以上、低分子量で高度の陽性荷電化外来蛋白(c-OA)は、全身循環を経由してTBMとボーマン嚢に選択的に結合し,さらに液性免疫関与によりin situ型免疫複合体の形成しICAM-1とMHC class IIの発現を介してTINを誘導した。 平成11年度は、このモデルにおいて、起炎因子の発現、尿細管上皮や間質構成細胞の形質転換、マクロファージ誘導因子の発現、間質病変の遷延化について、経時的、体系的かつ定量的に解析する予定である。
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