研究概要 |
これまでに、間質性腎炎における尿細管上皮の形質転換(MHC class II,ICAM-1の発現)には、マクロファージ由来のサイトカイン(IL-1βやTNFα)ではなく、活性化Tリンパ球由来のINF-γが関与することを、in vitroによる尿細管上皮の単離培養系を用いて証明した。そしてINF-γによりMHC class IIを発現させた尿細管上皮細胞がスーパー抗原とともにT細胞を活性化することを確認した。今回は、in situ型免疫複合体間質性腎炎のマウス実験モデルを用い、単離腎尿細管上皮をフローサイトメトリーにより検索する方法を応用して、尿細管間質に浸潤する炎症細胞の種類とそのサイトカインの同定、そして尿細管間質細胞の形質転換との相互関係を経時的に検索することを目的とした。Balb/cマウスを正常家兎血清にて前免疫し、その後、陽性荷電化ovalbumin(c-OA)0.5mgをマウスの尾静脈に注入し、5時間後、家兎抗ovalbumin IgGを同様に注入して、尿細管基底膜上にc-OAと家兎抗ovalbumin IgGから成るin situ型免疫複合体を形成させて間質性腎炎を誘導した。c-OA注入後、1日、4日、8日、16日にマウスを屠殺し、腎を摘出し、細切後、0.02%のcollagenaseにて消化し、濾過した後、DMEM/HamF-12無血清培地に移し、浸潤する炎症浸潤細胞と腎尿細管間質の構成細胞を比重分画法により単離した。そして、単離された腎構成細胞と炎症細胞をフローサイトメトリー(FACS法)により検索した。対照群として正常マウスの腎を同様に解析した。炎症細胞の分画では、抗Mac-1(CD11b)、CD4,CD8a,Ly-6Gの陽性細胞を,サイトカイン、ケモカインに関しては、抗INFγ,TNFα,MCP-1,PDGDF,PDGFR-β,osteopontinの陽性細胞を、腎尿細管間質構成細胞の分画においては、抗MHC class 2(I-A^d/I-E^d),MHC class I(H-2D^d),ICAM-1(CD54),B7-1(CD80),B7-2(CD86),α smooth muscle actin,vimentinの陽性細胞を検索中であるが、比重分画の分離法、分離された細胞の同定法がいまだ確立されておらず、現在改良中である。
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