研究概要 |
平成13年度は、免疫組織化学ならびにin situ hybridization法を用いて、間質性腎炎の進展機構に関与する種々のサイトカイン、ケモカイン、増殖因子を解析した。まず、陽性荷電化ovalbumin(c-OA)を用い、Balb/cマウスの尿細管基底膜上にc-OAと家兎抗ovalbumin IgGから成るin situ型免疫複合体を形成させ,さらに、マウスを正常家兎血清にて前免疫する事により、尿細管間質性腎炎を誘導した。c-OA注入後、1日、4日、8日、16日、32日に屠殺し、摘出された腎の凍結切片上で標識された各種抗体を作用させた。c-OA注入後、4日目から間質内にMac-1(CD11b)、CD4,CD8a,Ly-6G陽性細胞の浸潤を認め、それと同時に、尿細管上皮にはMHC class2(I-A^d/I-E^d),transforming growth factor(TGF)-β1,heat shock protein(HSP)47分子の発現を見た。また、糸球体毛細血管係蹄ならびに尿細管周囲毛細血管の内皮細胞に,ICAM-1(CD54)が増強していた。Vimentinは4日目の早期には、間質細胞ならびに間質内の浸潤炎症細胞だけに陽性であったが、14日、32日目の後期には尿細管上皮に陽性を示した。TGF-β1、HSP47,platelet derived growth factor(PDGF)-A陽性細胞も早期から間質に浸潤していたが、必ずしもマクロファージ(Mac-1)陽性細胞とは一致しなかった。後期には、間質内細胞にαsmooth muscle actin,TGF-β1,HSP47の発現が増強した。E-selectin,P-selectinは毛細血管内皮に陽性であった。In situ hybridizationによる解析では、経時的に採取された腎の凍結切片材料を用いてmRNAの発現を検索したところ、早期の尿細管間質にIL-1β、TNFα,monocyte chemoattractant protein(MCP)-1,osteopontinの発現を見た。以上、早期の間質内炎症細胞浸潤が尿管上皮ならびに間質細胞の形質転換を誘導し、さらに形質転換した尿細管上皮ならびに間質細胞が間質線維化の準備状態を規定していることが分かった。
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