MRL/lprマウスのリンパ節は、病理形態学的には悪性リンパ腫と区別し難いまでに腫大する。腫大リンパ節中のリンパ球の大部分は、いわゆるlpr-T細胞が占めるが、それは非腫瘍性である。何故FAS遺伝子の機能を喪失すると悪性リンパ腫と見紛うまでのリンパ節腫大を来すのか? lpr-T細胞は一体どこからどのように発生し集積するのか?この一見単純な疑問を解くという本研究の基礎データとすべく、lpr-リンパ節腫の自然史を検討した。約500匹のMRL/lprマウスとMRL/+マウスの臓器重量等の基礎データを集積した。 MRL/lprマウスのリンパ節は、8週齢頃から腫大し始める。12週齢頃がら明らかに正常発達曲線から乖離する。25週齢頃に最大(1-2g大、90%以上がlpr-T)となった後、大きさと共にlpr-T細胞の比率も減じる。40週齢頃から再び腫大する。脾も同様に著明に腫大する。脾は生後19日齢頃に突然その大きさを増すが、この現象は正常マウスでも観察される。腸間膜リンパ節も著明に腫大する。パイエル板は著明な変化は観察されなかった。腸間膜内に散在するリンパ装置(乳班なと)は、明らかに腫大するが他のリンパ節程には腫大しない。lpr-T細胞は、6週齢頃からリンパ節に明らかに認められるようになる。ところが、腹腔遊離細胞中には5週齢頃には1pr-T細胞が小数ながら認められた。 lpr-リンパ節腫の自然史は一般に考えられているより遥かに複雑である事が判明した。観察された事実は、1pr-T細胞やlpr-リンパ節腫の発生や消長は時系列上にプログラムされた複雑な個体発生的細胞動態を反映した表現型であることを示唆する。
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