MRL/lprマウスのリンパ節は、病理形態学的には悪性リンパ腫と区別し難いまでに腫大する。腫大リンパ節中のリンパ球の大部分は、いわゆるlpr-T細胞が占めるが、それは非腫瘍性である。何故FAS遺伝子の機能を喪失すると悪性リンパ腫と見紛うまでのリンパ節腫大を来すのか? lpr-T細胞は一体どこからどのように発生し集積するのか? 一方、ALYマウスは、常染色体性劣性の突然変異遺伝子により、リンパ節を完全に欠損する。一遺伝子の異常により、MRL/lprマウスではリンパ節が著明に腫大し、ALYマウスではリンパ節が欠損する。これらのマウスを詳細に観察する事により、リンパ節の形態形成と恒常性維持の機構を解明できることが期待される。 ALYマウスを解析し、(1)リンパ節・パイエル板がほぼ完全に欠損すること、(2)胸腺・脾は小さく、脾でのリンパ濾胞の発達が極めて不良であること、(3)大網乳斑は存在すること、(4)肝・肺・腎等の全身諸臓器にリンパ球が集積すること、(5)T・Bリンパ球は存在すること、(6)リンパ球亜集団の組成に異常があること、(7)NK活性は正常であること、等を見出した。これらの所見は既報と矛盾するところがなく、かつ、新たな知見を追加するものである。脾リンパ装置は、その構造が著しく正常と異なり、リンパ濾胞が欠損すること、マージナルゾーンも欠損することが強く示唆された。また、Bリンパ球生成の場と考えられている骨髄において、B細胞分化の諸段階に相当する亜集団の組成に著しい偏移があることが観察された。即ち、ALYマウスでは、リンパ節・パイエル板の欠損に加え、血液免疫系の細胞、特にBリンパ球系に異常が存在する。それらの病理学的な異常表現型と機能的な異常の因果関係の解析は今後の課題である。
|