研究課題/領域番号 |
10670219
|
研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
神代 正道 久留米大学, 医学部, 教授 (90080580)
|
研究分担者 |
家村 昭日朗 久留米大学, 医学部, 助手 (40212724)
矢野 博久 久留米大学, 医学部, 講師 (40220206)
|
キーワード | 肝細胞増殖因子 / 肝細胞癌 / matrigel / ケモカイネシス / ケモタキシス / 細胞株 / 金コロイド |
研究概要 |
今年度の実験は、deletion type hepatocyte growth factor(dHGF)による癌細胞の運動及び浸潤能の検討を中心に行った。以前のdHGFの10種類の肝細胞癌細胞に及ぼす検討で、KYN-3株とHAK-3細胞の2株においてdHGFの細胞分散化作用が観察された。今回の検討では、dHGFのHAK-3細胞に対するchemokinesis効果を金コロイド法で、chemotaxis効果をマトリジェルインベージョンチャンバー法を用いて詳細に検討を行った。金コロイド法によるchemokinesis効果の検討では、細胞周囲の金コロイド粒子の同心円状剥脱が認められ、dHGF添加により無添加培地で培養したHAK-3細胞に比べ約20%の金コロイド剥離面積の拡大が観察された。即ち、dHGFにより、細胞接着性の減少と方向性のない細胞運動能の亢進が示された。マトリジェルインベージョンチャンバーを用いたchemotaxis効果の検討では、chambermembrane上で培養したHAK-3細胞は8mm pore sizeを持つMATRIGEL塗布chamber membraneを破りmembrane下面への浸潤が観察された。単位面積あたりの浸潤細胞数は、membrane下面の培地にdHGFを添加した場合に、dHGFの濃度依存性に増加が見られ、20ng/ml、40ng/mlのdHGF添加培地では、コントロール群に比べそれぞれ約18倍、14倍のchemotaxis効果が観察された。このchemotaxis効果の亢進は、dHGFの濃度勾配の存在下でのみ観察された。dHGFは、生体内では線維芽細胞や血管内皮細胞など多くの間葉系細胞がその放出源と考えられている。肝細胞癌細胞は、dHGFの放出源である癌細胞周囲組織あるいは血管内皮細胞との間には濃度勾配を保った状態で接していることから、癌細胞の脈管侵襲の一つの機序としてdHGFによるchemokinesisあるいはchemotaxisの亢進が関与している可能性が考えられた。
|