研究概要 |
本年度は、11種類の肝細胞癌細胞株及び肝細胞癌とその非癌部組織における5種類のMatrix metalloproteinase(MMP-2,MMP-9,MT1-MMP,MT2-2MMP,MT3-MMP)とそのインヒビターであるtissue inhibitor of metalloproteinase(TIMP-1,TIMP-2)の発現に関して検討を加えた。細胞株における発現は、フローサイトメトリー法を使用し、各種MMPとTIMPの発現レベルを5段階(-、±、+、2+、3+)に分けて評価した。組織における発現は、DAKO CSA systemを使用した免疫組織化学的検討を行った。肝細胞癌細胞株での検討では、MMP-2とMMP-9の発現が最も高頻度で、3+が9株、2+が2株認められた。膜結合型のMMP(MT-MMP)3種類の中では、MT1-MMPの発現が最も高頻度に認められ、3+を2株に、2+と+を1株づつに、±を7株に認めた。その他のMT-MMPの発現は、ほとんど認めなかった。TIMPの発現は、TIMP-1の発現は、ほとんど認められず、TIMP-2の発現を高頻度に認めた(3+が7株、2+が4株)。8症例の肝細胞癌及びその非癌部におけるMMPとTIMPの発現検討では、肝癌細胞におけるMMP2の発現をすべての症例で、MMP-9の発現を5例で、MT1-MMPの発現を4例で、MT3-MMPの発現を6例で種々のレベルで認めた。MT2-MMPの発現は、認めなかった。上記いずれも非癌部肝細胞でもその発現を認めたが、MMP-9では、癌細胞での発現が、肝細胞よりも強い症例が比較的多く認められた。MMP-2の発現は、実質細胞以外に線維性結合織、クッパー細胞、門脈内皮細胞、血洞の内皮細胞などにも認められた。TIMP-1の発現は、ほとんど認めなかったが、TIPM-2の発現を全例に、しかも癌細胞に同等かより高い発現を認めた。細胞株の結果と組織の結果によい相関性を認めた。最終年度は、癌細胞のinvasion assayと伴に、MMPやTIMPの発現誘導及び抑制因子の検討、活性の測定、組織の症例数の追加や臨床病理所見との比較などを行う。
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