研究概要 |
【方法】(1)11種類の肝細胞癌細胞株における5種類のMatrix metalloproteinase(MMP-2,MMP-7,MMP-9,MT1-MMP,MT2-MMP,MT3-MMP)とそのインヒビターであるtissue inhibitor of metalloproteinase(TIMP-1,TIMP-2)の発現調節に関して検討を加えた。細胞株を11種類のサイトカイン(EGF,bFGF,HB-EGF,HGF,IGF,IL-1a,IL-1b,PDGF,TGF-a,TGF-b,TNF-a)で前処置後、MMPおよびTIMPの発現量に変化がみられるかどうかflow cytometryで検討した。(2)平成11年度に行った免疫染色を症例を増やし追加検討した。また、肝細胞癌部及びその非癌部組織中のactive+pro MMP-2およびactive MMP-2の発現量をELISA法を用い検討した。【結果】(1)すべての細胞株で比較的高いレベルのMMP-2とMMP-9の発現を認めたが、TIMP-2とMT1-MMPに関しては、低レベルの発現で、MMP-7,TIMP-1,MT2-MMP,MT3-MMPに関しては発現を認めなかった。今回検討した11種類の細胞株のうち、7株は、ほぼすべてのサイトカイン前処置により細胞のMMP-2の発現が抑制される傾向がみられた。(2)免疫染色に関しては、症例数を12例増やし合計20例で検討を行ったが、前回と同様の傾向を認めた。ELISAによるMMP-2の定量結果は、18例の検討症例のうち、非癌部のpro+active MMP-2発現量が癌部より高い症例が半数、その逆が半数であった。分化度別では、中〜低分化癌の4症例中3症例で、非癌部でのpro+active MMP-2の発現量が高く、癌部の2倍以上だった。低分化癌の1例は、逆に癌部でのpro+active MMP-2の発現量が今回検討した中でもっとも多かった。active MMP-2の発現は、18症例中7症例でみられ、7例とも非癌部での発現量が高かった。肝細胞癌及び非癌部では、MMP-2,MMP-9,TIMP-2,MT3-MMPの発現頻度や量が高く、癌部と非癌部での発現量に顕著な差はみられなかったが、活性型MMP-2は非癌部での発現が高かった。
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