研究概要 |
我々は平成11年年度,スカベンジャー受容体を標的とする非ウイルス遺伝子導入法を用いた動脈硬化治療法の研究を目標としてきた.その目的達成のため現在までにApoEペプチドベクターを用い培養細胞への遺伝子治療をおこない,in vivoでの可能性を示してきた(Arteroscler Thromb Vasc Biol,1999).動脈硬化治療戦略として現実的に使用されるためには,生体という複雑系でのSRBIの役割をより明らかにしなければならない.そのため,次の目標である生体内での遺伝子治療の可能性をヒトCETP過剰発現マウスを用い,SRBIと動脈硬化の関連の解明へと移行している.CETP過剰発現動物では血清HDLは極めて低く,易動脈硬化性と考えられる.しかし,血清リポタンパク代謝が極めて複雑な相互関係から成り立っていることから,まず最初にHDL,LDL,SRBI,CETP,肝臓内コレステロール,糞中コレステロールさらに動脈内脂質沈着の程度などを総合的に捉えるために,病理形態学的および病態生理学的な検討を行ってきた(平成12年度日本循環器学会発表).同動物における動脈硬化症とSRBIとの関係は現在まで明らかではないものの,HDL欠損の一理由にSRBIの過剰発現があることが強く示唆されてきている.さらにHDLを中心とした代謝回転を時間軸を考慮し明らかにすることで,この遺伝子治療が動脈硬化症という慢性病に対して将来的に現実味のあるものとして行きたい.
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