研究概要 |
【目的】G型肝炎ウイルス(HGV)の全長ウイルスをクローニングし、その分子ウイルス学的特徴を明らかにすることを目的とした。更に、分離株の変異速度を求めた。 【患者】HBV,HCV,HGVの持続感染を認める日本人肝硬変患者を対象とした。さらに、現在と12年前の血清からHGVを分離し比較検討した。【方法】血清100ulよりRNAを抽出しnestedRT-PCR法によりHGVの各領域を増幅後、サブクローニング法にて塩基配列を決定した。5UTRおよび3UTR領域はRACE法にて増幅した。分離株はGenBankより入手した既知のHGVを含めて、分子系統樹解析を行った。 【結果】全長9387ntよりなるHGV(HGV-IM71)を分離した。HGV-IM71は2873個のアミノ酸をコードするpolyproteinと、458ntと310ntよりなる5UTRと3UTR各々有していた。3UTRには、poly-Aの存在は認められなかった。既知のGBV-C/HGV株を比較すると、塩基レベルで西アフリカ株(GBV-C)とは81.1%、米国株(HGV-PNF2161)とは85.1%、日本株(GT230)とは86.5%の相同性を有していた。分子系統樹解析では大きく三群に大別でき、HGV-IM71はアジア型に分類できた。更に同一患者から12年前に分離された約6Kbの遺伝子との比較から、その変異速度は0.8×10^<-3>/site/yearと推定された。【結語】日本人由来のHGV全長遺伝子を分離した。HGV-IM71は既知のHGV/GBV-C株とは高い相同性を有していた。一般のRNAウイルスと同様に時間の推移による遺伝子変異を認めたが、HCVにみられる高変異領域を示唆する所見は得られなかった。
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