がん細胞の浸潤転移におけるがん間質相互作用の重要性が注目されてきている。近年、基底膜の構成蛋白であるlaminin-5が、消化器がんや口腔扁平上皮がんの浸潤先端部において誘導されているとの報告が見られ興味深い。そこで今年度は、早期肺腺がん102例の組織標本を用いてlaminin-5の免疫染色を行い、その組織内の局在と予後因子としての意義について検討を加えた。結果の要約は以下の通りである。 (1)1aminin-5の発現部位について。肺胞上皮がん:laminin-5の発現はほとんど認められなかったが、間質の不規則な線維性肥厚を示す部分では局所的なlaminin-5の発現が見られた。また、がん細胞が線維間質内にbuddingした部位において、laminin-5の強い発現が認められた。浸潤性増殖を示す肺腺がん:がん組織内における発現は一様ではなく、同一症例においても部位により発現レベルの違いが認められた。Laminin-5の強発現は線維性間質に接する部位、間質が豊富でがん胞巣が小型の部位に多く認められた。 (2)laminin-5の発現と他の組織学的因子との関連。2元表を用いたx^2検定で検討したところ、laminin-5の発現は、血管侵襲、線維芽細胞の増殖巣と相関し、リンパ管侵襲やリンパ節転移との間には相関を認めなかった。 (3)laminin-5の予後因子としての意義。小型肺腺がんをlaminin-5の発現レベルにより2群に分けて検討したところ、単変量解析、多変量解析のいずれにおいても、laminin-5の強発現が独立した予後因子であることが明らかとなった
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