研究概要 |
昨年度は、細胞外基質蛋白であるラミニンー5が、(1)肺腺がんで高頻度に発現し、特に線維間質との境界部あるいは浸潤先端部の腫瘍細胞内において強発現を示すこと、(2)小型肺腺がんの独立した予後因子となりうること、を明らかにしてきた。本年度は、さらにラミニンー5の発現誘導の機序を明らかにする目的で以下の検討を行った。 1.肺腺がんの培養株におけるラミニンー5の遺伝子発現レベルを検討し、EGF受容体、erbB-2の発現、あるいはMAPKの燐酸化等との関係を比較した。その結果、ラミニンー5のmRNAレベルが、erbB-2の発現レベルあるいはMAPKの燐酸化レベルに相関することを見いだした。 2.ラミニンー5の構成分子であるβ3,γ2鎖の遺伝子プロモーター領域をデータベース上で検索した。その結果、AP-1,NF-kB,NF-IL6,ets-1などの結合モチーフが存在することを見い出した。 3.肺腺がんの培養株に、(1)TNF-α、IL-1β(NF-kBの活性化因子)、(2)TGF-α、HGF(MAPK,AP-1の活性化因子)を添加し、ラミニンー5γ2鎖mRNAレベルに与える影響を検討した。その結果、細胞間で差はあるものの、上記サイトカイン、成長因子の添加により、ラミニンー5γ2鎖mRNAの誘導が、時間依存的におこることを見いだした。
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