感染後好酸球増多、高IgEレベルが誘導される3種類の寄生蠕虫、Trichinella spiralis、Nippostrongylus brasiliensis、Mesocestoides cortiよりcDNAライブラリーを作成し、各々の寄生虫感染血清を用いてイムノスクリーニングを行ったところ、3種類の寄生虫のcDNAライブラリーから27個の陽性クローンを得た。各遺伝子の塩基配列を決定して、比較したところ8種類の遺伝子が得られた。その遺伝子の塩基配列より推定されるアミノ酸配列の間には、共通の構造は見い出されなかった。現在詳細に検討中であるが、アレルゲンに共通の構造により、Th2免疫反応が誘導される可能性は低いと考えられた。 また、得られた抗原に対する特異的IgEが宿主において産生されているかどうかを検討するために、β-ガラクトシダーゼ融合蛋白と抗IgEモノクローナル抗体、ビオチン化抗β-ガラクトシダーゼ抗体を用いたサンドイッチELISA法を開発した。この方法を用いて、すべての融合蛋白について感染宿主における抗原特異的IgE産生の有無を検討したところ、特異的IgEが産生される抗原とそうでない抗原が存在した。すべての遺伝子は感染血清を用いたイムノスクリーニングで得られたので感染血清中には明らかに抗原に特異的なIgG産生があるはずである。にもかかわらず、ある抗原は特異的IgE産生を誘導し、別の抗原は特異的IgE産生が認められないという非常に興味深いことを示している。現在さらに、抗原の種類により特異的IgE産生に差が出てくるメカニズムと寄生虫感染宿主におけるTh2サイトカイン産生に対するこれらアレルゲンの役割を明かにすべく研究をすすめている。
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