宮崎肺吸虫成虫cDNAライブラリを作成し、感染血清を用いて、抗原候補物質として熱ショックタンパク質が、抗原として認識され、宮崎肺吸虫cDNAライブラリより熱ショックタンパク質3クローンが分離した。 宮崎肺吸虫の熱ショックタンパク質は、3クローンともHeat-shock protein 70のアミノ酸配列にきわめて相同性が高い。また、このクローンは、小胞体滞留配列を持たず、細胞質型のHeat-shock protein 70に相同性が高かった。さらに、ストレスによってのみ発現するHsp70よりも、細胞質で常時産生され、ストレスによっても発現が増加するHeat-shock cognate protein 70のアミノ酸配列に相同性が高かった。したがって、分離した3クローンは、細胞質に存在するHeat-shock cognate protein70であることが示唆された。 これまで、肺吸虫症での抗原として、熱ショックタンパク質は報告されいないが、宮崎肺吸虫において発現されるHsp70の種類と特性、発現の特徴(発育や免疫機構との関連)、局在を分子生物学的に研究をすることにより、宿主-寄生体関係の解明に寄与すると考える。また、熱ショックタンパク質が診断抗原やワクチンとして活用できる可能性も示唆されている。
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