研究概要 |
これまでの研究によりネズミマラリアPlasmodium yoelii感染マウスの赤血球に好中球遊走因子が存在し、分子の解析の結果α,βインターフェロン刺激によって誘導されるinterferon induced protein(IP18)であることがわかった。また、この分子のほぼ中央部に好中球遊走因子の活性部位が存在することがわかった。今回の研究はこの遊走因子のマラリア感染に果たす役割の解析をおこなった。ラットを用いてIP18に対する抗体を作成し、ウエスタンブロット法によりP.yoelii感染経過にともなうIP18の局在の変化を調べた。その結果、赤血球または肝臓に存在するIP18は正常マウス由来のものでも若干認められ、感染後6日でピークに達することがわかった。一方、脾細胞においては正常マウスでもかなりのレベルのIP18が存在したが、感染経過にともなって蛋白質レベル、mRNAレベル共に増加することが示された。P.falciparumの培養系において、増殖阻止する効果があるかについて調べた。採血直後の血球を用いて培養したときには、添加したIP18の濃度に依存した増殖抑制が見られた。各ステージごとに分けてみると、IP18の増殖抑制効果は輪状体に対して最も強く見られたが、栄養体、分裂体に対する効果はそれほど目立たなかった。これに対して、採血後20日経過した血球を用いて培養した系では増殖抑制効果は見られなかった。また、IP18の代わりにユビキチンを添加した場合には新鮮血球、20日経過した血球ともに増殖抑制効果は見られなかった。また、古い血球に新鮮血球から分離した好中球を添加しIP18と共に培養すると、添加した好中球の濃度依存的に原虫増殖効果が見られたが、IP18の代わりにユビキチンを添加した場合には、実験した範囲の好中球濃度では増殖抑制効果は見られなかった。
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