研究概要 |
正常マウス及びP.yoelii感染マウス(感染後7日目)から得た、赤血球のライセート及び血清の好中球遊走活性を各濃度において比較測定したところ、感染マウス赤血球ライセートに特に強い好中球遊走活性が濃度依存的に認められた。感染後の経過日数と赤血球ライセートの好中球遊走活性の変化を調べると、感染後3日目にはすでに遊走活性の上昇が見られ、感染後5日目にほぼピークに達しており、パラシテミアの上昇に先行する形で好中球遊走活性が増加することがわかった。精製した好中球遊走因子の分子解析の結果α,βインターフェロン刺激によって誘導されるinterferon induced protein(IP18)であることがわかった。また、この分子のほぼ中央部に好中球遊走因子の活性部位が存在することがわかった。今回の研究はこの遊走因子のマラリア感染に果たす役割の解析をおこなった。ラットを用いてIP18に対する抗体を作成し、ウエスタンブロット法によりP.yoelii感染経過にともなうIP18の局在の変化を調べた。その結果、赤血球または肝臓に存在するIP18は正常マウス由来のものでも若干認められ、感染後6日でピークに達することがわかった。一方、脾細胞においては正常マウスでもかなりのレベルのIP18が存在したが、感染経過にともなって蛋白質レベル、mRNAレベル共に増加することが示された。P.falciparumの培養系において、増殖阻止する効果があるかについて調べた。その結果、好中球を添加しIP18と共に培養すると、添加した好中球の濃度依存的に原虫増殖効果が見られたが、IP18の代わりにユビキチンを添加した場合には、実験した範囲の好中球濃度では増殖抑制効果は見られなかった。これらの結果から、IP18がマラリア感染における感染防御に寄与している可能性が示された。
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