病態の進む方向は、Th応答のバランスによって、大きく変わることが近年の研究で明らかになってきた。一般に、腸管寄生線虫感染では、Th2応答が感染防御に重要な働きをしていると考えられている。腸管寄生虫症のひとつである旋毛虫感染にともなって、IgE産生や好酸球増多などTh2タイプの応答がひきおこされる。IL-3は血球幹細胞に作用し、顆粒球コロニー刺激因子として、またマスト細胞の分化増殖因子としても知られているが、寄生虫感染におけるTh2応答にIL-3がどのように関わっているのか、これまでのところ明らかになっていなかった。私たちは、本研究をとおして、旋毛虫感染マウスにおいてIL-3がTh2応答増強因子として作用し、感染防御反応を促進する因子のひとつであることを明らかにした。さらに、全身のリンパ節とパイエル板を欠損するというユニークな特徴をもつalyマウスを用いた研究から、旋毛虫感染マウスにおけるTh2応答の誘導に二次リンパ組織が重要な働きをすることを示した。また、alyの実体は、遺伝子調節タンパクNF-κBを活性化するNuclear factor inducing kinase(NIK)の点突然変異であることが最近明らかにされたことから、少なくとも旋毛虫感染では、Th2応答の誘導にこのシグナル伝達経路が重要であることが示唆された。
|