平成10年度では糸状虫感染幼虫のアンフィッド機能を化学物質等で障害後、虫体の宿主への侵入行動がどのように変化するかを明らかにすることが目的であった。 まずは、その侵入行動を観察できるin vitroのアッセイ法を確立させた。ペトリディッシュ(直径35mm)に深さ4mmになるように寒天を注ぎ、固めた後、直径2mm、深さ2mmの穴を二つ、1cm離して開ける。このとき、1つの穴には宿主であるスナネズミの血清、もう一つの穴にはリン酸塩緩衝液(PBS(-))を入れ、2つの穴の中心に虫体を置く。このような条件を設定した後、適切な寒天溶媒、寒天の濃度、および反応温度をまず検討した。その結果、寒天を蒸留水に溶かし、その濃度が0.6%、温度が37℃が最適の条件で、90%以上の虫体が血清の穴に入るか、血清の方へ移動する。この条件下で、穴の中心に滴下する液(この液中に虫体が含まれる)は、PBS(-)や0.9%食塩水中が最適なアッセイ条件であることが明らかとなった。この条件下で、0.4%〜1%の次亜塩素酸ナトリウムで処理した虫体を使用したが、何も処理しない対照群と同様の結果を得た。また虫体をグルコース(1mg/ml)液に入れて反応させると、多くの虫体がその場にとどまり移動しなかった。 平成10年度はアッセイ法の確立に時間がかかり、多くの実験成果はあがらなかったが、次亜塩素酸ナトリウム処理した虫体の結果は予期しなかった。植物寄生性線虫では、同処理された虫体は宿主への侵入が抑制されたという報告があり、今回の動物寄生性線虫である糸状虫感染幼虫との結果とは異なり、検討する必要がある。 またグルコースでの反応結果は、グルコースが虫体の行動に影響を与えている可能性が示唆され興味深く、今後予定していたアンフィッド機能障害させた虫体の観察を早急に行いたい。
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