研究課題/領域番号 |
10670236
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
浅井 隆志 慶応義塾大学, 医学部, 講師 (50175163)
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研究分担者 |
野崎 智義 国立感染症研究所, 室長(研究職) (60198588)
佐貫 潤一 慶応義塾大学, 医学部, 助手 (90255571)
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キーワード | トキソプラズマ / Neospora caninum / NTPase / 遺伝子 / ATPase |
研究概要 |
Neospora caninum Nc-1株には二つ以上のサブタイプがあることが昨年の研究で判明している。この件に関してcDNAの解析を行ったところ、二つのサブタイプのmRNAが合成されていることがわかった。しかしそれぞれのサブタイプのアミノ酸配列はわずか四つしか違わず、酵素活性の違いは存在しなかった。どのタイプもトキソプラズマのNTPase-Iと非常に似た基質特異性を示した。N.caninumの人体寄生例検索の目的で、このN.caninumのNTPase(NcNTPase)遺伝子組換体を作製し、ヒトIgG抗体との反応性を酵素抗体法(ELISA)で調べた。健常人30名のIgG抗体とNcNTPaseは反応せずELISA吸光度は低値(平均値 0.04)であった。色素試験陽性者(T.gondii感染者)73名のうち2名のIgG抗体だけがNcNTPaseに反応し陽性であった(m+3SD以上)が、のこり71名のIgG抗体は全く反応しなかった。この結果は、健常人とほとんどのT.gondii感染者のIgG抗体はNcNTPaseと反応しないことを示している。この陽性の2例は当然N.caninum感染が疑われたが、両虫体の全抗原を用いたウエスタンブロット法による精査の結果、両感染者ともNcNTPase以外のN.caninumのどの抗原とも反応しないが、多数のT.gondii抗原と反応することから、両名のN.caninum感染は否定された。NcNTPaseとT.gondiiのNTPaseのアミノ酸配列は約69%の相同性があることから、2例の陽性者の免疫系は両抗原の共通配列部分を強く認識したものと考えられる。NcNTPaseを用いたN.caninum感染者の検索は多少の疑陽性者の出現は考慮しなければならないが、非常に有用であることが示唆された。
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